改めまして 親子のリング

「以前作っていただいた結婚指輪と同じものをオーダーすることはできますか?」

突然かかってきた男性からのお電話。

「え?! どうされたんですか?」

声の主は以前マリッジリングを作らせていただいたご夫婦のご主人でした。

奥様がリングを紛失してしまったとのこと。

 

「そうでしたか。オーダーの記録があるので大丈夫ですよ。」

とお返事すると、その後すぐにご主人が来店されました。

ご主人の行動の早さに、奥様の紛失されたショックの様子が想像されます。

 

「注文すると、いつごろ仕上りますか?」

「今からならホワイトデーには間に合いますよ。」

とお答えするとホッとしたような表情。

大きな体を曲げ深々と、

「よろしくお願いします!それと、このことは妻には内緒でお願いします!」

ご主人の行動と奥様を思いやる優しさに感動しました。

 

リングの作り手である佐久本弥生さんに伝えると

「やさしいー!素敵な旦那さん!!けど奥さんショックだろうなー。。」

「そうなんだよね、ただ作り直すだけじゃなくて、何かできないかな。。」

 

紛失した奥様、買い直すことを決めたご主人、お二人のそんな気持ちを明るくする、何かできることはないか。。。

アクセサリーポーチや、リングを置くトレイ、、、いやいや違う。。。

「そうだ!ベビーリングをプレゼントしよう!」

 

ご夫婦のリングは昨年の6月にオーダー頂きました。

オーダーいただいた時にはお腹の中にお子様が。

その後無事ご出産されたことを知り、ご誕生に何かお祝いをさせていただきたいなと思っていたところでした。

お二人のリングは、ご主人がプラチナのマット仕上げ、奥様はプラチナにK18の鏡面とマット仕上げを組合せたリング。

仕上げの違いを確認していただくために用意していたサンプルを見た奥様からのアイデアでした。

当時、佐久本さんもこのような異素材を二つ使い、仕上げを分けたリングを作るのは初めての経験でした。

 

ベビーリングも奥様のリングのような雰囲気で作ろう!

お二人のリングの特徴を分け合った感じにしよう!

そう決め、さっそく作業に取り掛かります。

プラチナの代わりにシルバーを、K18の代わりにK10を使い、二本の線の太さを揃え端をロウ付けしてリング状にします。

角を削って甲丸リングに。

直径1cm程のリングをヤスリで削り整えるのはなかなかの作業。たまに爪や指をヤスリそうになります(笑)

表面をマットと鏡面で仕上げ、お子様のお名前とお誕生日を刻印して出来上がり。

 

 

佐久本さんの奥様のリングも仕上りました。

思いがけず再度製作することになったリングを手に、

「はじめて作った時もなかなかよくできたと思ったけど、今回上等にできましたよ!我ながらいい出来です(笑)」

 

ご自宅への郵送をご希望だったので、ホワイトデーに間に合うようにご自宅宛にお送りしました。

ベビーリングのことはご主人にも内緒です。

 

ホワイトデー当日、奥様からお礼のメールが届き、そして母の日前日に奥様がご来店されました。

胸元に小さなリングのネックレスをして。

 

ご主人とお子さんもご一緒です。

オーダーの時は奥様のお腹にいたお子さんがご主人の腕のなかで笑ってます。

ようこそ! 改めましていらっしゃいませ(笑)

 

もうすぐ七ヶ月を迎えるそう。

もうベビーリングを指にはめることはできないため、チェーンを通して奥様がネックレスとして愛用してくださっていました。

 

すっかりお母さんとお父さんになった若いお二人と、人見知りせずニコニコご機嫌なお子さん。

幸せそうなご家族の様子に嬉しくなりました。

 

改めましてのマリッジリングとベビーリングが、これからのご家族の暮らしに寄り添う存在になると嬉しいな。

幸せな気持ちでいっぱいの母の日前日の出来事でした。